─仕事のことを伺わせてください

唐突ですね。笑

──はい。今取り組まれているプロジェクトや関心のある仕事など、これからの展望などお伺いできればと思います。

仕事としては、本業はデザイナーなので、グラフィック関係が多いです。とはいいながら、デザインは軸足というか、デザイン的な視点からその次の領域を開発する、企画することの方が多いけど。

──グラフィックデザインということでいえば、印刷物やロゴのデザインなどでしょうか?

もちろんそれもありますが、そもそもなぜそのデザインを発注しているのかというところから取り掛かることが多い。

例えば、ロゴであれば会社を立ち上げる、ブランディングを見直す。など。仮に成果物として納品するのがロゴだとしてもなぜそれをするのかというところから取り組まないといけないなと常々思っています。当たり前のことなんですけどね。

─なるほど。ロゴやその他のデザインがメインで、結果開発や企画が多いということはどういうことでしょうか?

ロゴの話を進めていくうちに、会社の沿革や今までのご苦労とかを伺っていると、どうしても次から次へとロゴ以外のアイデアが出てきてしまう。もちろん、ロゴをデザインする上でもそういった視点からどういったデザインが相応しいのかなどは非常に重要な要素になるし、ロゴができた暁には映像を作りましょうよ!とかそのエピソードをコンテンツにしましょうよ!って話に展開していくのも自分的にはスリリングでそこからまたストーリーが始まっていく感じですごくいい。

──昔からそのスタイルなんですか?

いや、どちらかというとその1点の成果物に専念する制作スタイルの方が多かった。ただ前にも話したように、キャリアとして4年ごとくらいに職業を横断する形で転々としていて、5年くらい前から、あれ?俺ってデザイナーって職業でいいのかなと思うようになった。

もともとイベントを企画したりすることは好きだったので、手法としてのクリエイティブや、視点としてのクリエイティブを基軸に、どこまでできるんだろうと挑戦したのが、リミッツというイベントでしたね。

もちろん、背景にはお世話になっているイラストレーターやキャラクターデザイナーのスペシャリストの方々の活躍の場を作りたいという恩返しの意味もあったけど。

──直近のプロジェクトとしてはどういったものがありますか?

仕事の大小は関係なく、最近はコミュニティに対するアプローチに注力してます。コミュニティの定義はさまざまだけど、会社はもちろん、具体的には自治体や街、商店街、学校などかな。

改めてここ2年くらいで色んなことで、昔からのコミュニティが見直されてきたり、コミュニティそのものが立ち行かなくなったり、新しいカタチのコミュニティが出現してきたりで、目が離せない。

──特に目が離せないのはどういったところですか?

今まであまり外に開いていなかったコミュニティに対して、目的や目標を設定してどうすればその在り方をより意味のあるものにしていけるかということかな。具体的には自治体による情報発信だったり街づくりだったり。

どのコミュニティもそうなんだけど、当たり前にできること、例えばSNSで情報発信したり、ウェブサイトをリニューアルしたり、そういったある程度確立されているアプローチは俺じゃなくてもたくさんの人が関わって然るべきだと思うんだけど、じゃあ自分には何ができるかなというところで、本当にコアな部分のゼロイチだったりを一緒に取り組んで方法論を確立していくというをやっていきたいと思っているから、その視点で見た時に例えば苦境に立つ観光地の人は何を考えているんだろうとか、本やメディアではなかなか見えてこないニーズは目が離せない。

ある種大喜利的なところもあって、今まであった色んなものを組み合わせてプロトタイプを考えていくところ、それを実現可能な形で制作チームに引き継いでいくことみたいなところをやっていきたい。

─幅広いですね。

そうなんだけど、ひとつ同時に課題があって、今までの企画であれイベントであれ、ゼロイチの分野において全てワンストップでやってきたツケというか、この歳になったら当たり前に考えるべき若手育成が全然できてない。ただ周りの環境にはめちゃくちゃ恵まれてきたので、なんとかなってきたけど最近は積極的に20代前半の若い才能と一緒に仕事がしたい。

──人材育成ですね。

若手育成と言っておきながら実はこちらとしては得るものしかなくって、思考そのものが違うから単に上から指示を出して成果を上げるだけではなく、コミュニケーションから導いていくってことができればいいなと思ってる。昔は自分も若かったし、負けず嫌いだからどこか力で捩じ伏せようとしていたところも少なからずあって、それではいかんなぁと思ってる。

──背中を見せる的な

それを意識的にやるのはダサいなぁと思うようになった。実際自分は今でもそうだけれど、本当に先輩には可愛がってもらって、いろんなことを教えてもらったり連れて行ってもらったりした方で、よく考えたら見せられた背中には反発しかしてなかったな。と。笑

──具体的にはどういうやり方で若手と関わるのですか?

特に意識はしない。けど、いかにフラットに接することができるか。仕事の中では、結果ではなくプロセスにコミットできる方がお互い目標にズレがないというか、そういう意味では年齢ではなく性格的な相性みたいなのはかなりあるとは思うけど、学ぶ姿勢だけでこられても知るか!ってところは今でもあって、お互い得るものがないとやっぱりコミュニケーション主体の仕事にはなりにくいなというのが、道半ばでの感想。

やっぱり若い子のいいというものには音楽であったりガジェットであったり、すごく興味があるし、特に自分の好きな分野が幸い広いおかげで接点は多く持てるのは良かったなと思う。

──若手から慕われてるんですね。

ありがたいけど、そうは思わないようにしてる。俺も先輩には世話にはなったし、尊敬こそすれどそこまで年長者を慕ってなかったから。笑

勝手に育って勝手に自立してその子の人生を精一杯謳歌してくれたらいいなと思う。

──これからの展望という点ではどうですか?特に、その興味のある分野の人とどうやって出会っていくかなど。

俺は人が多く集まるところは苦手なので、異業種交流会とかそういった類のところにはあまり行かないので、これに関しては今の繋がりから広げていくしかないかな。

でも引き寄せの法則ってのは実感することが多くあって、自分に正直に発信していけば大丈夫かなと。不安はあるけど。笑

──引き寄せの法則、強く成功したときのことをイメージすることで、その夢が叶うという法則ですね。

夢が叶うっていうか、人との出会いが全てだと思うから、いい出会いも悪い出会いも含めて、うーん、そうね。強くうまくいくイメージをすることかな。スピリチュアルは嫌いだけど。

物事なんか、99%は悪い要素で構成されていると思ってて、ロバと老夫婦の話みたいに批判しようとか悪く思おうとすればいくらでもできるわけで、別に無理にポジティブに考えるってことじゃなくて、悪いイメージなんて所詮なんとでもできるってことを忘れないようにしないといけないなと思います。マジで。

──確かに。

批判というものに耐性がなかったときは他人の顔色ばかり伺うような性格だったから、それが無駄な承認欲求と結びついて、ろくでもない失敗もしたけど、色々あってそういうのも認識できるというか、仕方ないなと思うから自分が正しいと思ったことをやるだけ。

──ろくでもない失敗って?

ここでは言えません。笑

けど、自分に正直なことと、例えばSNSに好き放題書くのは決定的に違うので、アウトプットは気をつけないといけないですね。

──笑

今の社会が生きにくいのって、さまざまな道徳観念があって惑わされそうになりやすいことだと思うから、自主自立の精神というか、ゼロイチでなにかを起こすときは自分の中で自立した強い信念みたいなものを持つということが大切なんだなとこの歳になって気付きました。笑

ただ、さっきの若手の話じゃないけど、若い人はそこんところは俺が若かった時とは違うくって、すごく自立していると感じる。

──そうですか?

一般的にイメージから相反することかもしれないけど、自立って人を正しく頼れることだと思うのね。人のせいにしないというか、自分が如何に人に助けられているかの自覚と言い換えることができるかもしれない。自分の場合、あの人がいう自立って、孤立じゃない?あ、俺、孤立しようとしてたんだ。って気付いてそこから自分の行動に責任が持てるようになった、今はよちよち赤ちゃんです。笑

なので、若い子のそういう意識は見習いたいとこもたくさんある。もちろん、苦労してないだけっていう人がいるかもだけど、別に他人が苦労してるかしてないかなんか関係ないしね。

──まぁ確かに。しかしここまでお話を聞いていて、仕事というものと個人としての考えっていうものに境界線がないんですね。

ない。全くない。あ、あるとしたらクルマのゲームをしている時だけ。完全に自分の世界。

──ゲームするんですね。

クルマのゲームだけね。

──安心しました。自立と人を頼るって話ですが、普通の生活だけではなく、仕事の依頼にも言えることですね。

そう言いながら自分にプレッシャーかけてるところはあるけど。

それに働くことと仕事することというのは結構明確な線引きがあるかな。

人が動くことは単に行動することで、仕事は人ではなく事に仕える。事は案件ではなく、ある種使命的なことだと思うので、それはもはや生活との線引きは俺の中では引くことができない。

けど、恥ずかしいからこの辺にしてください。

──熱く語りますね~

7、8年くらい前に、アメリカで働く尊敬する日本人の先輩に、熱く語ってすいません的なことを言って、すごい怒られたことがあるの。アメリカのハイウェイで爆走しながら将来の夢を語ってたら恥ずかしくなっちゃって照れ隠しでそう言ったら、ハイウェイの出口を8個くらい乗り過ごしながら「やりたいことやるヤツが熱く語るのは普通だ!もっと自分に正直に自分の気持ちを言うべきだ!そんな中途半端な気持ちでやってるのか!!!」って。

それから、熱く語るのは恥ずかしいけど、できる限りそうしようと思ってる。それで失敗したこともあるけど、失敗して進んでいくことは別に嫌じゃない。

──その失敗は話してもらえるんですか?

長くなるから、またの機会に。

クライアントは不安になっちゃうかもだけど、「失敗しながら進む」ってのは、自分の中のポリシーでもあるので。

──ではいつか、伊丹谷版しくじり先生の機会を設定しましょう

それはやめて!笑

──なるほど、今回仕事に関してでしたが、人に関することばかりですね。最後に、あなたにとって仕事とは。

人生最大の暇つぶしです。

──笑

暇つぶしは楽しいことの方がいいに決まってる。